近年、少子高齢化や環境問題をはじめとする困難かつ多様な課題が地域社会に噴出している。また、これらの先進的な課題について解決の道筋が未だ不透明であることが事態の深刻さを物語り、工業化とともにもてはやされた概念である「効率」の名の下に、20世紀に大きく変質・強大化した社会システムの限界も浮き彫りになってきた。進んだ分業・専門分化やこれを支える階層構造的な組織は、現代の地域社会がかかえる、複雑で多元的な課題の前で機能不全に陥ってしまった。
しかしながら、われわれは明るい希望を捨てることはできない。地球上の生物のなかで最も知恵を使うことに長けた人間は、人間の行動が起因となっている上記の課題を完全に解決することができるはずであり、「みんなが幸せな社会」の実現も可能であるはずだ。成功のカギは、多様な主体におけるさまざまな「変える力」をつなぎ、複雑かつ困難な課題を解決し「社会を変える力」を生み出せるかどうか、にかかっている。
いっぽうで、いま多様でダイナミックな「つながり」を最も活発に発生している現場は、インターネットをはじめとする、激変する情報コミュニケーション技術(ICT)の世界であるが、ここで、滋賀県においては固有の課題がさらに問題となってくる。以前は、福祉や環境問題にかんして全国をリードする課題解決の成果を琵琶湖のまわりで生み出してきたが、その成功体験があるがゆえに、残念ながら今日のダイナミックな変化への対応は鈍い。なかでもソーシャルビジネスの分野においては後塵を拝している状況にある。
そこで我々は、多様な専門家をゆるやかにネットワークし、ICTをはじめとするキーテクノロジーを活用し、地域社会の課題を解決しようとする多様な人、活動、コミュニティを支援するための、有用なプラットフォーム(場と道具)を提供するために立ちあがることとする。
(補足)
滋賀県が遅れている要因として、大きくは2つの問題が指摘できる。1つめの問題は、滋賀県は人口比の起業率が最も低い、ということ。かつては大きな力を発揮していたNPO活動も、先進的な課題への挑戦を可能とするための「ヒト・モノ・カネ・情報」資源を、活用・循環させるための知識・技術・人材の獲得、ならびに組織の健全化・活性化が遅れている。しかしながら他方では、小学校区単位の地域コミュニティを再生して住民が自立的自律的にまちづくりを推進しようとする、いわゆる「まちづくり協議会」が県内の半数を超える百数十の小学校区で誕生している。2つめの問題は、滋賀県は内陸工業が盛んで第2次産業就業者の割合が最も多い県であるが、先進的な技術・技能の蓄積が「まちづくり」にはほとんど活かされていないこと。全国的にみても、世界をリードし驚異的な発展を続けている情報コミュニケーション技術(ICT)、人工知能技術、ロボット技術等は、地域社会の課題を解決する潜在的なインパクトが大きく、海外だけでなく国内でも具体的な事例が現れはじめている。
2015年3月12日